生活衝百科2

ラッパー東京未開封( Smash Egg Records)(EX ZIGOKU-RECORD)が人生というクイズに挑戦します!!!正解したら褒めてくれ。

82話 暴徒達の海岸⑨暴力

虫取り網をかぶせる黒パーカー。
虫取り網の中で激しく暴れる何か。
それを取り押さえ、虫取り網のふくらみを無理やりへし折る黒パーカー。
「ギャーッ!!」
空に掛かった電線にまで届く鋭い悲鳴。
ゴミ置き場に白いゴミ袋を置く小林。手を数回ふるってから集団の元へかけていく。


商店街を一列に連なり、歩く黒パーカーの集団。
それを見ている子供。彼らの置いた白いゴミ袋を開ける。
「わっ!」
腰を抜かす子供。
ゴミ袋の中に詰まったカラスの死体…。


黒パーカーたちを避けていく人々、彼らの姿を見て、あわてて身を隠す権田の仲間達。
「人々に感謝されると言うのは気持ちがいいな、小林」
「はい」
笑って答える小林。


「どうしてわからないかな?」
パーカーの集団の眼前で、あの太った白髪の男が女性ともめている。
「キミの事を認めてるんだよ!モデルとして!協力くらいしてくれたっていいじゃないか!」


手を上げて集団をとめる黒パーカーのリーダー格の男。
飛び出す小林。
「やめてください」と男を振り払う女性
「なんて女だ!お前なんてろくな…」
鈍い音とともに、小林に殴られる男。


しゃがみこむ男。拳に握った石をすて、男のわき腹をローファーのつま先で蹴る小林。
「うぐ…」
地面にうつぶせになった男の頭を何発も踏みつける小林。あわてて小林を抑える、別の黒パーカーの男。
「放してくださいよ!こういう空気が読めない奴一番ゆるせないんスよ!」
リーダー格の男にビンタされる小林。
「勝手なことすんな…」
歯を見せて、目を見開き唇を痙攣させるリーダー格。
「ゆるして…」
商店街の中、立ち上がれない男に背を向ける黒パーカーたち。


海岸。曇り空の下、優也はペットボトルをまた打ち上げている。音を立てて、水を吐き出しながら放射線に飛んでいくペットボトル。
「危ないね…」
遠くで散歩していた、マフラーを付けた老人がつぶやく。
「わっ!」
横に黒パーカーの集団が立っていたのに気づき驚く老人。
再び、手をあげるリーダー格の男…。その手が砂浜に向かって振り下ろされる…。


神妙な面持ちで、ノートになにか記し、再び水道でペットボトルに水を詰める優也。その背後に掛かる人影。振り向いた瞬間、殴られる優也。背後の流れっぱなしの蛇口に頭をぶつける。


そのまま、無理やり大柄な黒パーカーの男に引き起こされる優也。
男達の輪の中にそのまま飛ばされ、飛びけりされる優也。
優也の額から垂れる血。荒い息。
輪の中で黒パーカー達に殴られ、蹴られる優也。
遠くで呆然として見ている老人。
砂浜に膝をつく優也。その目に映る流木を持った小林。
目を見開く優也。


ゴンッ。
倒れた優也に背を向け、正面に向かって、手をはたきながら歩いてくるパーカーたち。
「わ…わしゃしらん…」
震える老人。
「わしゃ、しらんぞ!!」
あわてて階段を駆け上がろうとする老人、途中で膝をぶつけ、階段に倒れてしまう。
そのまま動かない老人。
海の向こうで聞こえる小さな雷鳴…。
水浸しになる、数式が書かれたノート。とその横を流れていくペットボトル。


テラスに座るユラとキラの元にサンドイッチを運ぶピッコリ
それを見ながらサンドイッチをほおばる未開封。
―――こいつら、学校に行かなくなった…―――
顔を見合わせるユラとキラ。
――なんか、望がはっきりしないからってのが理由らしい。―――
「このままではお嬢様達は傷つく」
未開封の脳裏に浮かぶ、剣持の背中。
「なんであのじじぃが出てくんだよ、そこで…」
未開封が、腑に落ちない表情でつぶやいたとき、部屋の電話が鳴った。


ピッコリがでようとすると、お父様の試練だからと言う理由で自分から電話を出るユラ。
「え…権田さん…?」
電話を置いた、ユラが言う。「お部屋を片付けなきゃ、キラちゃん。望君がくるよ。権田さんと一緒に…」「権田?」たずねる未開封。「ええ、柔道部の主将さん。角刈りの」
口にパンの欠片をつけた未開封の表情が変わる。
(奴だ…!)


物置をあさる未開封。背後から近づいてきたピッコリに「おい!なんかこの家に武器になるもんねぇか?」と聴く未開封。「それで…なにを?」「中坊に負けたら、また恥っさらしなんだよ!!」クローゼットを開ける未開封。黙りこくるピッコリ。その時、呼び鈴が鳴った。


「畜生〜ィ!」なぜか、ドレスをつかんで駆け出す未開封。「ムッシュ!」階段を駆け下り、玄関に向かう未開封。ユラとキラ、そして権田と望の姿を見とめる。


「てめ…」ドレスを小脇に抱えたまま、階段の上から権田をにらむ未開封。
深刻な表情で、靴を脱ぎ、ユラとキラの間に割ってはいる権田。
「え…」


玄関で土下座してる権田。
「頼む…!アンタしかいないんだ…!こんなことを頼めるのは…」


フードを目深に被り、歩いている小林。メガネの奥、鋭い目。


―――優也はオレの友達だ。―――
―――あいつとは、一条さんたちをかけて今年の正月、決闘した―――
神社の境内、向き合う、優也と権田。
―――オレは負けたが、あいつならと思った!―――
正座したまま、語る権田。ドレスを抱えた未開封。
拳を震わす、権田。
―――でも、オレら…それで仲良くなってよ。オレはスポーツ推薦決まったからいいけど、オレの作った一条姉妹親衛隊ってのはあんま頭よくない奴らばっかでさ…―――


壁にもたれかかる未開封。
―――あいつ、すげーいい奴でさ、自分だって忙しいのに勉強付き合ってくれてさ。オレが合格決まったときはみんなでカラオケ行ったりしてな…―――
鉄塔の下、くしゃみをする黒パーカー。
―――だが、あいつは昨日、黒パーカーの奴らにやられちまったんだ…。なにもしてないのに、寄ってたかって、動けなくなるまで…!―――
下を向き、誰とも目を合わせない望。


「あさっては、滑り止め校の面接があるってのに!あいつは…あいつは今病院のベッドの上だ…」
握り締められる未開封の拳。固まったままの表情。震える肩。
「敵が…とりたい…」
下を向きながら言う権田。
「ムッシュ…」
未開封達の背後に立つ、金属バットを抱えたピッコリ
「これ…いる?」
ドレスを差し出し、代わりにバットを受け取る未開封。バットの腹をゆっくり叩き、硬さを確認する未開封。


「これ、どこにあったの?」
笑う未開封。
「剣持さん、元高校球児なの。」とピッコリ
へーといいながら、バットを担ぎ、背を向ける未開封。そのまま靴を履く。
「優也とは…俺もダチだ。マブダチだ」
立ち上がる権田。
「え…」と怪訝な表情の望。
「行くぞッ!!!」


未開封の叫び声と同時に駆け出す、権田。
「「望君!」」とユラとキラが呼び止めるが、とまらずそれを追う望。
―――オレはなをやってるんだろう…喧嘩なんてしたくない…ましてや、優也の敵なんて―――
振り向きそうになる望。
―――とにかく、なにかしなくちゃダメだ…―――目の前を走る、ジャージをまとった未開封の背中と、権田の背中をしっかりと見る望。
不安そうなユラとキラ。その目に映る望の背中。
―――ごめん、ユラちゃん、キラちゃん…これが終わったら必ず決着つけるから!!―――
玄関から飛び出てきた3人に驚く剣持。目をそらす望。


いつかの急斜面の上。
汗をたらし、息を切らす未開封と望。
「なんだ、情けねぇ…」
「うるせー、てめーこそそいつらの居場所とかしらねぇのかよ!!町外れの工場にたまってるとかよぉ!」
「オレだってよく知らないんだ!」
黒い雲。膝に手をつき、息を整える望。


「奴らは、アンタがこの町にくる少し前くらいから暴れてたんだ。リーダーの奴は昔、この町住んでたらしいけどな」
膝を曲げ、バットに頬杖をつく未開封。
「そんなやりたい放題で警察とかうごかねぇのかよ…極悪リンチ集団じゃねぇか」
「うわさでは、リーダーの親が警察署長だとか…」
「うわさかよ…」


自販機の前に立つ望。
「町の奴も怖がっていてな…我が一条姉妹親衛隊の奴らも…」
「くーっ情けねぇ」
下を向く未開封。
「それどころか…あいつらに感謝する奴までいるんだ」
お茶を飲む望。
「望、俺にも一口…って、なんで感謝すんのよ」
「なんか、犯罪が減ったとか、カラスが減ったとか…」
望に渡されたお茶を飲む未開封。目が細められる。
「カラス…ぅ?」
立ち上がる未開封。
「そんなことより、息が整ったなら早く探そうぜ…」
「いや…その必要はねぇ…」
ポケットから取り出されるタバコ、火をつけ、一口吸う未開封。火のついたタバコで目の前を指す。


振り向く権田。
震えるタバコと望の目線先。
輪になった、黒パーカーたちがいた。
こちらを向く黒パーカーたち。
その輪の中、鼻血を出し、倒れているゴルフクラブを持ったおじさんの姿が望の目に留まる。
思わず、手にしたお茶のペットボトルを落とす望。


斜面の上、向き合う黒パーカーたちと未開封たち…。
彼らのはるか手前にある看板「この場所でのゴルフや犬の放し飼いはやめましょう」


「お前らァ!!!」
でかい怒鳴り声をあげる権田。
手を上げて、集団の歩みを止める黒パーカーのリーダー格…。
「!」
その前に小林が躍り出る。
怪訝な表情のリーダーを尻目に、パーカーのフードを脱ぐ小林。天然パーマー気味の髪を無理やり七三にした頭、白い肌。そのままメガネをはずす小林…。
「あ…」
くわえタバコのまま、立ち止まる未開封。
「甲斐…」
小林。
「じゅんちゃん…」
呆然とした未開封。


「お前、本名…カイっていうのか?あ、あいつは知り合いなのか!?」
構えたまま、未開封に向かって怒鳴る権田。
ゆっくり歩いてくる小林。
まっすぐ伸びるメリケンサックを付けた拳。
「がっ…」
横っ面を殴られ、バットとタバコを落とす未開封。
そのまま横っ腹に入れられるソバット。
倒れて、斜面を落ちていく未開封…。
「未開封!!…いや、かい…さ」
権田の背後に立つ大柄の黒パーカー。
「わーっ!!」
目を閉じる望。
男のバックドロップで地面に叩きつけられ、白目を向く権田。
斜面の下に落ち、ごろごろと草の上を転がる未開封。
険しい表情で斜面を滑り落ちていく小林。


倒れた権田の腹を踏みつける無数のローファー。
地面に降り立ち、そのまま走りながら起き上がろうとした未開封の顔を蹴る小林。そのまま馬乗りになる。
白目をむいたまま、ごふごふと咳をする権田。即頭部を蹴られる。
耳を防ぎ、顔を背ける望。
斜面の下…笑いながら、未開封を馬乗りで殴り続ける小林。
ゴロゴロ…となる黒い雲。
大柄のパーカーに無理やり立たされるぐったりとして、顔から血を流した権田。
「キレイな町…美しい町…」
差し出された権田をまじまじと見るリーダー格の男。
飛び上がるリーダー格の男。権田の顔を歪めて、叩き込まれる回し蹴り。
ずるずる倒れていく権田を見て、口もとを歪めて笑うリーダー格の男。
立ち上がり、未開封の頭を踏みつける小林。
内出血で晴れた未開封の顔に次々と落とされるローファー。


目を開けた、望の前に落ちているバット。
震える膝、つばを飲み込む望。
「きたねぇな…」
自分のローファーについた、権田の血を見てつぶやくリーダー格の男。
「おい!小林ィ!!」
斜面の下の小林に向かって怒鳴る男。
「勝手なことしてねぇで、とっとと来い!カスが!!」
未開封を蹴るのをやめ、ゆっくり立ち上がる小林。
そのまま、振り向かず、斜面をあわてて登っていく小林。
リーダーにビンタされる小林。
そのまま、身をかがめパーカーの袖でローファーを拭く小林。
背を向け、震えている望に近づくパーカーたち。
「あーそいつはいいよ」
小林にローファーを拭かせたままパーカー達を止める、リーダー。
足元に落ちているペットボトルを拾うリーダー。
「ここ、ボクの町だからさ…ちゃんとゴミはゴミ箱にしてもらわないと困るんだよね」
震えながら、差し出されたペットボトルを受け取る。望。
そのまま、よろよろと、自販機横のゴミ箱に向かう。
「バカだなぁ、そこじゃないよ」
笑いながら言うリーダー。
青い顔で立ち止まる望。
「ゴミ箱はあれだ」
リーダーの指を指した方向に、口あけて倒れた権田がいた。
目を見開く望…。


ぽつぽつと、降り出す雨…。
白目をむいた権田の口に無理やり入れられた空のペットボトル…。
「そう、ゴミは、ゴミ箱に…」
笑い出すリーダー格。あわせるように一斉に笑う黒パーカーたち。
響く笑い声に、膝を突く望。
去っていく黒パーカーたち…。
降り出した雨。
あっというまにぬれていく斜面の上。
死んだように下を向き雨に打たれる望。
権田の口に挟まれたペットボトルにたまっていく雨水。
黒ずんでいく草の上におちた吸殻。
水滴を、カンカンとはじく金属バット…。

雨が町に降り続ける。