生活衝百科2

ラッパー東京未開封( Smash Egg Records)(EX ZIGOKU-RECORD)が人生というクイズに挑戦します!!!正解したら褒めてくれ。

78話 暴徒達の海岸⑤名も無きドラゴン達

翌日から、屋敷で雑用をすることになった未開封。たまプラーザから逃げ出したことに対して、何も聞かないピッコリに感謝しながらも、いつもどおりケツを揉んだり、「調子のんなよババァ!」とか言ったりする。


そんな未開封の女性の扱い方を、よく思えないユラとキラ。二人は学校に行く。転校したての二人だけ、皆と制服が違った。望を見かけた二人は、親しげに話しかける。そこにもう一組の双子の女の子、一条姉妹が現れる。両手に花の状態をうらやましがる小阪。しかし、望は浮かない表情を見せる。


一方、バケツをひっくり返し、掃除の仕方が悪いと剣持に怒られる未開封。すいません…と言いかけて、唐突に昨日であった親子のことを思い出す。


「人を笑わせてぇ!」そんな衝動に再び駆られた未開封は、剣持をシカトして屋敷を飛び出す。


商店街で同じところをぐるぐる走り回る未開封。その頭の中で開催される「笑点放送だいたい3000回」。「ダブルドラゴン若草物語のお二人です!」客席の円楽のコール。舞台の上に現れる未開封。「どうも〜〜ダブルドラゴン若草物語です!」静まり返る客席、自分の横を見る未開封。「あれ…相方が…」


海辺、望は独り風に吹かれている、その手に握られた70点のテスト用紙。「航空宇宙学科があるから東西大学付属高校に行くよ」…望の脳裏には未開封がこの前、海辺であったペットボトルロケットの少年の言葉が浮かんでいた。


「相方がいねぇと…漫才できねぇ!」商店街で大声で叫ぶ未開封。
―――俺は別に…―――
駐車してあるチャリンコの列にそのまま突っ込む。
―――芸人になりてぇわけじゃない―――


同じ頃、近くの本屋。ぶつぶつと意味不明なことを叫びながらコーナーを徘徊する男がいた。「だからだめなんだよぉ!!」甲高い奇声を上げる男のその背後に、黒いパーカーの男達が立っていた。鈍い音に、読んでいた新聞で顔を伏せる本屋の店主。しばらく悲鳴と殴る音が続き、男達は万引きをしようとしていた少年を捕まえ、そのまま店を出て行く。


「なにすんだよ!離せよ!オイッ!」「ありがとうございました…」店の中に残された倒れて痙攣する男。


―――オレは、なにをやりたいんだろう…――


一条姉妹の横で、空に向かって指をさすペットボトルの少年。「どこから空が宇宙になるか知ってる?」風に吹かれる望のかばんについたマスコット。進学塾の教室。机に一人で座る望。白紙の進路希望。「「望君…私達と…つきあってくれませんか!」」顔を突き出すユラとキラ。「夢をかなえるんだ」「そして薫子さんにも告白する」ペットボトルの少年のまっすぐなまなざし。


―――ただ、俺は噛み付く力がほしかった…―――
よろよろたちあがる未開封。
―――誰にも邪魔されたくなかった…今は…―――


小路で、メリケンサックルをはめた黒パーカーに殴られる少年。その背後で携帯電話を見ている黒パーカーの一人。携帯電話の画面。「中学生とかマジ死ね」「無職とか身障は萌えないゴミ!全員殺してほしい!」携帯電話を閉じた男は崩れた少年の頭をローファーで踏む。


まだ一人ぼんやりしている望。「いまとても楽しいから、あんまり気にしないで」ユラとキラの言葉が反芻してくる。その言葉を自分で言ってみる。

―――宙ぶらりんのまんまじゃ…だめなのかな…―――
―――このままでいい…―――
海と夕闇。


坂を下っていく未開封。
坂を上っていく望。


すれ違う二人。立ち止まる未開封。「なんでやねん!!」振り向いた望のみぞおちに入る拳。咳き込む望。「この…」表情をしかめる望。「お、お前こそなんでやねん!」殴り返す望。坂の上でつかみ合いになる二人。くしゃくしゃになる望の髪。脱げる未開封のパーカー。


一時間後…。闇の中…タバコをつける未開封。うまくライターがつかない。急に火が大きくつき、「あちっ!」と悲鳴をあげる未開封を見て思わず笑う望。「なんだよ…」言いながら未開封は自分も笑ってしまう。


翌日。
「「「「「望ちゃん」」君は?」」と同時にたずねてしまう一条姉妹とユラとキラ。
校門の前で突っ立っている未開封。「よっ!」と手を上げる望。「じゃあ、案内してくれよ」「いいですよ」学校を背に歩き出す望と未開封。その後姿を見送る一条姉妹達…。


「誰あれ?」