生活衝百科2

ラッパー東京未開封( Smash Egg Records)(EX ZIGOKU-RECORD)が人生というクイズに挑戦します!!!正解したら褒めてくれ。

62話 俺達に明日は無い

「ボク、チッチャナ頃カラワルガキダッタノヨ…」
シオンはリングを見つめながら身の上話を始める。
両親を事故で無くし、里親となじめずグレていた少年時代。パパン拳法使いの住職と出会い、改心した青春時代…そして、昔の仲間を喧嘩で運悪く殺してしまい、住職に迷惑をかけないように、観光客相手の仕事で覚えた日本語を頼りに日本へ密航した事…。


「ボクヨリ、師匠ノ方ガ強イ…ボク、奥義知ラナイネ、オ教エレモラエナカッタネ」
「じゃあいつかその師匠もぶっ飛ばすムギ!」
言い合うパシリとシオンの口元はいつの間にか緩んでいた。


帰り道、エースに「あんな胡散臭い連中にじゃなく、大学のボクシング部で習ってみないか?」と打診されるパシリ。しかし「あそこがイイ!」と言い張る。「なんか、たまんね渋さがあるムギ!」「あのハゲ頭に?」「あのハゲに!」


天城が運転するセダンの中、包帯を巻いたシオンは通り過ぎていく246の風景を見ながら言う。
「ヒサビサ熱クナッタヨ…ボク、マジチョウ疲レタネ」
「シオン…早くクニに帰れ。クニ、自分のカントリーにな。みすみすブローカーの借金の為にヤクザの下働きするこたぁねぇ。取り返しのつかない事にならないいうちに…」
「マダヨ。パシチャン、対戦相手探シテルデショ?ツヨクナリタイツッテンデショ?…ボク、紹介スル。女ダケドスゴク強イ…ボクノ姐サンネ…」


「ごめんなさい、裕美姉さま!」
同じ頃、パシリに殴られた少女、葉月は以前未開封が出版社で出会った女性、裕美に抱きついていた。


その頃、未開封が崖の上から暗い海を覗き込んでいた。背後に立つ「いのちの電話」の看板。「ready…」


「Too Fast To LiveToo Young To Die!!」
サムは、氣志團を聴くと大喜びするジャクソンの弟の為に「キラ!キラ!」を熱唱していた。風呂上りのジャクソンの姉ちゃんに変な顔をされながら。


「何度言ったらわかるんだ!大盛りはミニラーメンとラーメンを一緒に出すことを言うんじゃないんだぞ!」
中華料理屋の2階、国籍の違う人々が一室に集まって鍋を囲っていた。店の店主はその中の一人の女に対し怒鳴る「後、大盛りチャーハン頼まれて普通のチャーハンとゴハン出すな!なんでそんな貧乏くさい日本の文化知ってんだよ!よく混ぜてくださいとか言いやがって!」そこにシオンが帰ってくる「シオさんも言ってくれ!」


『パスタ屋に勤めたかったわ…。美味しいパスタを出す店に…』母国語でぼやく女。「オイ!…なんつってんだこいつ?…っていうか、ビール、ビンで頼まれてコップ五つ出すって!もはやこれ確信犯だろ!オメー!」


「リメルダ姐サン…」
怒鳴られる女に声をかけるシオン。


「モウ、マブダチジャケン…アイツトボクハ…」
車を運転する天城。その横をヘッドライトが通り抜けていく。


橋の上から下を指差す裕美。身を乗り出す葉月。


雲から現れる赤い月。
その下で一人屋根の上に座っているエリフリーデ。
「だけどお嬢様…友達は所詮他人、いずれ裏切りますよ」と呟く。