生活衝百科2

ラッパー東京未開封( Smash Egg Records)(EX ZIGOKU-RECORD)が人生というクイズに挑戦します!!!正解したら褒めてくれ。

59話パシリのザ・バイオハンター④別離

「射的は得意か?」
グラブとヘッドギアをつけて、ウカジとのスパーリング挑むパシリ。リーチのあるウカジを相手に、腕の短いパシリのパンチはなかなかあたらない。


「拳の…ほんの一面しか使えんスポーツだ。全身で防御し、猫の額ほどの面積でのみ攻撃する」
頭部にワンツーをモロに食らったパシリは、生まれて初めてふらつく。「いけね…っ」とあせるウカジ。しかし、後退しながら、脚力を使って勢いをつけて前へ飛び出すパシリ。その勢いをのせたボディブローがウカジに刺さる。胴当てをしているにも関わらず吹き飛び、気絶するウカジ。


気絶したウカジを長いすへと運んだ天城は、胴あての陥没と、ウカジの腹に大きなあざが出来てるのを見て驚く。「ボクサーには二つしか武器がねぇ…でもその二つが核弾頭だとしたら…!」しかし、ジムを後にするパシリの背中を見て気づく。「でも、あいつをどうやってリングにあげんだ…?」


「ムンギィ…」家に帰ったパシリは、置手紙を見つける。それは未開封の書いた手紙だった。


「前略。俺は曙が笑えません。不似合いなグローブとパンツつけられて、無理にパンチやキックをさせられてる姿が、スーツを着せられて、昼間の新橋あたりの酔っ払いに査定されている自分の姿と被ります。曙と俺が違うのは、それが自分の意思かどうかです。そこら辺わかってください。先立つ不幸をお許してください毛根と同時に感受性が死滅したお父様(ステーキおいしかったです)過去の栄光にしがみついて、前向き前向きと言いつつ、実は自分が一番後ろ向きなバッキン・ザ・デイの連続のお母様(毎日ありがとうございます)。(中略)俺、海にいきます」


「俺ぁ、死ぬときは海って決めてんだよね」という兄の言葉を思い出すパシリ。帰ってきた未開封の母に見つからないように、手紙を食べてしまうパシリ。そして「にいちゃんは合宿に行ったムギ」と母親に嘘をつく。


――――「生々しくねぇ。」
夜の溝の口。
――――「こんなのちげぇ。」
繁華街を進むパシリの脳裏には未開封の言葉がよぎっていた。
――――「萌えとかそういうの、これまで俺がやってきたことじゃねぇ。やる事でもねぇ…」


「やっぱ、ネコ耳は最強の記号でしょ?」パシリの前から、かって未開封が追い回した青年、笹原が仲間と話しながら歩いてくる。
――――「作品は記号じゃねぇ…データーでもねぇ」


――――「作品は生きモンだ、血が通ってんだよ。耳を澄ましてみろ、パシリ。サム」
「ところで、田中は某アニメに関してはやっぱ原作原理主義?」「作画もだけど、あの脚本酷いね。どうして怒ったか理由が描けてないからねー」「しかし週2で川崎かよ」「こ、今度メイド喫茶できるらしいよ…」話をしている笹原の一団の前に、パシリは立ちはだかる。


――――「わかるだろ、熱くなったり、泣けてきたり…作品に共振するだろ?同じ血の通った生き物同士だからそうなる。自分と同じ魂がそこにあるから、グッとくる」


「なにこれ?なんかのマスコット?それとも連邦の白い奴?なんてなー」と言ったメガネの男の横っ面を殴るパシリ。「てめーらみてーなのがいなきゃよぉ!!!」と拳を振り回し、笹原の仲間達を一人ずつ、覚えたてのボディブローとフックで沈めていく。そして終いには、笹原をかばい仲裁に入った人達にもアッパーを決めて殴り倒し、繁華街は騒然となる。


――――「サイドストーリーは、俺が殺した」
喧騒に背を向け、一人歩いていくパシリ。駅前の広場では、女が男を蹴り倒し、「自業自得でしょ」と怒鳴り、弾き語りのミュージシャンが尾崎の唄を歌っていた。
――――「俺は小説で人を殺す」


『受け止めよう めまいすらする 街の影の中』
マンションの下を通り抜けるパシリの目に涙がうっすら浮かんでいた。


『さぁもう一度 愛や真心で立ち向かってゆかなければ……』
パシリの脳裏には、泣きながら怒鳴りつける未開封の母の姿、「あきらめるよ…」と疲れた笑みを浮かべた未開封の姿が浮かんでは消えていった。


――――「あいつら、俺の存在が不愉快だってさ…」
――――「ラッパー気取ってるけど、黒人とダンスもおどれねーんだぜって、バカにされたよ」
――――「そんなに気に喰わねぇなら、とっとと殺してくれよ」
――――「俺は負け犬だからよぉ…」


…そして、再びハゲ天ジム。ジムを閉めようとした天城の前にパシリが現れ、言い放つ「今すぐ外国人と勝負させて!!!」