57話じゅんくん⑥オモイデ…
前回まで
時間はたどり、再び47話の直後。
サムを探し、夕方の街へ飛び出す未開封。ジュンの家にたどり着くが、そこにサムの姿は無かった。「なんだよサブ芸人」「あいつ、誰かぶっ殺すゆうてたわ!ここ来るたびにめっちゃ機嫌わるぅなってたから、ここやないかおもうて!」「またエセ関西弁…」
テンパった未開封はサムが混ざっていないかと、ジュンの部屋のぬいぐるみや人形達を持ち上げだす。持ち上げられた人形、翠星石は抗議の声をあげるが、未開封は聞く耳ももたずサムを探し続ける。
そんな未開封を醒めた目で見るジュンに、真紅は話しかけるようにけしかける。「るせー!じゅんくんは黙ってろや!」。怒って、自分をじゅんとなれなれしく呼ぶ理由を未開封に問い詰めるジュン。
「昔、「じゅん」ちゅう名前のダチが居たんだよ。…そいつも引きこもってしまいにどっかに蒸発しやがった」「勝手に人の人生お前の思い出に置き換えんなよ!」「そんなんじゃねー!親近感沸いてるだけだろがぁ!チンカス!」
「チンカスぅ…?下品な野郎デス…」二人を冷ややかな目で見る翠星石。その姿を見た未開封は「に、人形が動いとる!」と驚き、そのまま階段をお茶を運びながら上がっていたのりの横を転げ落ちていく。「今更…」
帰り道、のりに巻かれた手の包帯をぼんやり見ながら歩いている未開封の前に、ずぶ濡れで鼻血を出したパシリが現れる。
「なんだよ、それ」
「にいちゃんこそ」
思わず笑いあう二人。明るい笑い声の横、街灯の下で蛾が死んでいた。