生活衝百科2

ラッパー東京未開封( Smash Egg Records)(EX ZIGOKU-RECORD)が人生というクイズに挑戦します!!!正解したら褒めてくれ。

暴徒の海岸⑫85話 「back the black power-memory of violence-」


ガンッ!!↓
垂直に落ちていく茶色い杖。


「げほっ…!」
地面に横たわる年老いた黒人。
その頬に突き刺さる杖。
せきと共に放射物線上に飛び出る白い歯。


「!!」
未開封のフードの下、額ににじむ汗。
未開封を掴んでいた男が、未開封の腕を離す。


「あ…」
口を開く未開封。
レンガで造られたメイベルの家へ向かって暗闇の中を歩いていく
帽子をかぶった男たち。


毛むくじゃらの手にもたれた鍬…。


「……」
手をぶら下げ、ぼんやり前を見ている未開封。
ぼやけて見える、輪になる三人の男の姿と倒れたホースト


ガッ!!!!
前方から聞こえた音共に。
アゴをあげ、鼻息を荒くする未開封。


(あれ…っ)
細い指を、白髪にあて叫ぶメイベル。
暗闇の中で振り上げられる腕。

ガンッ!!!
ガンッ!!!
大きく見開かれる未開封の眼。

―――…。

フローリングの上。
うんこ座りをして向き合うサムと未開封。


「マジ、殺すからよ」
唇から覗く未開封の黄ばんだ歯。


「殺す!」
バットを肩に担いで砂利道を走る、未開封、望、権田。
跳ね飛ぶ小石。


パァァァ―――…。
電車のドア。その向こうに暗闇。
眉間に皺を寄せてにらみ合う未開封と、やせた茶髪の男。


―――俺…いままでひとつでも…。


頭を掴まれるホースト。地面に落ちていく鼻とこめかみからの出血。
開かれるホーストの口。


ガツン!!


―――てめぇで決着(ケリ)つけられたことあんのかよ…ッ!!?


歯をかみしめ。眉間に皺が寄る。汗がにじむ未開封の貌。


「ハァ…この辺でいいんじゃないんですか…スクワイア…」
倒れたホースト
白い腕で汗をぬぐう。帽子の男。
顎鬚を触る杖を持った男。
カツン…。
ホーストの傍らに倒れる鍬。


「殺せ」
上に跳ねた口ひげを触る茶色い手袋に包まれた指。
「え…」
その顔を覗き込む帽子の男。
「英国には階級があり…秩序がある…それは守られなければならない…」
金属部分に微量の血のついた鍬。


杖を突き、黒い空中を見上げる男
「わかるように言おう」


ガリッ…。
肩を落としながら、一歩足を前に出す未開封。
「決して、下の階級のものが上の階級のものに逆らってはならない…たとえば貴様らは…」
グィ…ッ。
杖を握る。男の茶色い手。


杖を持った男の震えた唇と覗く白い歯。
「陛下に逆らえるのか?」
「…!?」
口を半開きにする、三人の帽子を被った男たち。
ギュッ…。
横で、うつむいていたリサの肩に手をかけるスクワイヤ。


杖がうつ伏せになったホーストの頭を小突く。
「…元は奴隷だった黒人が、スクワイヤの私のメイドに手を出すとは…それ程の事だ…」
起き上がる、痩せこけたホーストの顔。口から漏れる唾液。鼻からの赤い筋。


「何処だよ…」
ブツ…。
か細い声でつぶやきながら歩く未開封。
ブッ…。
「何処から…ものいってやがんだよぉ…」
握り締められ、震える拳。


「もう一度お調べなさい!!」
下を向いて叫ぶメイベル。飛散する汗と唾。
顔をあげ、男をにらみつけるメイベル。
ホーストさんが何もやっていない証拠だってある…私が…証人になります!」
手を胸に置き叫ぶメイベル。
メイベルのほうを向く帽子の男達。
「成金の…新参者の貴族どもに…この矜持は…わかるまい…」
男の口の端が、ゆっくりと上がっていく。


背を向けたまま、ホーストに向かって歯をむき出している男。
「貴女も本当のことを言って頂戴!」
リサに食って掛かるメイベル。
肩をつかまれ揺れるリサのポニーテール。
必死にメイベルから眼をそらそうとするリサ。
メイベルに掴まれる震えた手。


「え…」
スクワイヤと呼ばれていた男の顔から笑みが消えた。
杖を握る黒い拳。
膨れあがり、前より大きさが増している事に、皆が気づく。


ボキッ!!
黒い拳に握られ、砕かれる杖。飛ぶ破片。
その拳とつながり、前より膨らんでいる黒い腕。


カッ……。
黒く長い指が地面を掴む。
うつ伏せに倒れていたホーストの顔が起き上がる。
砂に汚れ…鼻から出血した。


若い黒人の貌。
見開く眼。


黒い残像。
「え…なに…」
煉瓦の家の前で、棒立ちになる三人の帽子の男と、スクワイヤと呼ばれた男。


ガッ!!
黒い拳がのめり込み、変形する白い顔。飛ぶ帽子。


びゅうぅぅぅ…。
しなるホーストの右足。
眼を丸くした男の股間に、残像を残して伸びていく黒い足。


一番若い帽子を被った男に伸びていく手。
逆らうこともなく、引き込まれていくその頭。
ボキィ!
斜め上を向く若い男の顔。顎にめり込んでいる肘。
だら―――っ…。
涎と一緒に男の開いた口から落ちていく歯。


「あ、あ、あ、あ、あ…」
足元に倒れていく若い男を見て、小さくうめくリサ。
ホースト…さん?」
立ち尽くすメイベル。


「アイム…」
笑っている様に見える、ホーストの黒い唇。
「フォー・タイムス・チャンピオン!!」
眼を見開き叫ぶホースト。ところどころが破れ、黒い四肢が露わになったズボン。
その周りでひざを突き、顔を抑え悶えている男。股間をおさえて腹ばいになっている男。
口をあけ、そこから血を流している、白目をむいた男…。
「……」
口を開きっぱなしの未開封。


杖を投げ捨て、ホーストから背を向けるスクワイヤ。
(チッ!…逃げんなッ?)
それに気づき、歯をかみ締め一歩前へでる未開封。
体勢を低くして、落ちていた鍬を拾う。


「フォー・タイムス・チャンピオン!!フォー・タイムス・チャンピオン!!」
走る未開封とすれ違う、白目をむいた男の頭を掴み叫び続けるホースト
「未開封さん…!?」
膝を突き、頭を抱えていたリサの肩を触っていたメイベルが、目の前を通り過ぎる未開封に声を掛ける。


黒い夜の森のほうに走っていくスクワイア。
「!」
ふと振り向き、その眼を丸くする。


闇の中で、鎌の様な棒状のものを大きく振り上げた、自分に向かって走ってくる人間のシルエット。
「!」
スクワイヤの革靴が踏みつける小石。
バランスを崩し、手を突き出したまま、地面に落ちていくスクワイヤ。


「ウラぁ!!!」
後方から迫ってきていた黒い影が、腕を振りかぶった。
ドサ!!
倒れたスクワイヤの顔の横に落ちてくる鍬。
身を反転させるスクワイヤ。
走ってくる未開封の姿。
「なッ、なんだ貴様ァァ!!!」
スクワイヤの直前で動きを止めるスニーカー。
「ハァ…何処だよ…」
未開封の髭の生えた顎にしたたる汗。
口に咥えられる細いタバコ。


カチッ。
ライターから飛び出るオレンジの光。
照らされる未開封の顔と、その光を映すスクワイヤの眼。


尻餅をついた黒い影。とその前に立つ黒い影。間からあがる煙。


「え…?」
スクワイヤの左まぶたに押し付けられた、細いタバコ。
じゅっ……。
赤い光が焼くまぶた。


「あああああああ!!!?」
顔を抑え、のけぞるスクワイア。
それを睨みながらタバコを咥える未開封。
「何処だ…」
フードの下の鋭い眼光…。


「てめぇ何処なんだよ!!!」
顔を抑えているスクワイアに向かって顔をゆがめて叫ぶ未開封…。


ああああ……。
黒く染まった木々のざわめき。