生活衝百科2

ラッパー東京未開封( Smash Egg Records)(EX ZIGOKU-RECORD)が人生というクイズに挑戦します!!!正解したら褒めてくれ。

67話 月と星⑦Ring-Out


パシリは夢を見ていた。
不思議な明るさを宿した黄色い海の中に突っ立ち。向こうにイルカと泳ぐサムを、横の崖の上に未開封を見ていた。パシリは自分の横にリメルダが立っているのに気づく。リメルダの頬には涙が光っていた。


「大丈夫かなぁ…」
「獣医連れて行く?」
エースとウカジの声に、リングの上で目を覚ますパシリ。視界の中に、椅子に座って天城に顔の止血をされている、右目を閉じたリメルダが入ってくる。よろよろと、力無く立ち上がったパシリ。そのまま歩き、リメルダに握手を求める。


「ふざけんじゃねぇ!」その様子を見たウカジはリングを降りてジムから出て行ってしまう。エースは一瞬、パシリ達の方を見てからウカジを追う。無言でパシリを見ているリメルダ。パシリを見て天城は言う「後先考えずスイングばっかしやがって…と思ってたが、あの手があったか」「ム?」「お前のフィニッシュ。あれはロシアンフックって奴だ。全然不完全だけど」「オーストラリアンフックムギよ!師匠!」「今考えたろ」「師匠だって思いつきでボクシングやってるって、ウカジさん言ってたムギよ」「あのやろうぉ…」二人の横でうつむいて小さく笑う、傷だらけのリメルダ。


ジムの外。タバコに不機嫌そうに火をつけるウカジ。近寄ってきたエースに「俺達はただ殴り合いさせてぇわけじゃねぇんだよ!あんなルールの無い喧嘩、どうにかしてるぜ!」と怒鳴るウカジ。「オレもそう思うよ…」とエース。「でもどうでもいんじゃないか…」エースの視線の向こう、ジムのガラス戸の中。パシリの手を、よろよろ立ち上がったリメルダが握り返す。


町に夜の帳が落ちる。
「かかりつけの病院あるらしいから、連れて行く」と、眼帯をしたリメルダを車に乗せる天城。心配そうに見ているパシリに、車に乗り込もうとしたリメルダははじめて微笑む。


エースの車には乗らず、夜の町を走りながら家路を急ぐパシリ。三叉路にかかった歩道橋にさしかかる。「川超えちゃったね、ハイジ…」前方から聞き覚えのある声。橋の向こうにはパシリがボクシングを始めるきっかけになったあの少女…。葉月が立っていた。彼女の姿を見たパシリは、橋の手すりをパンチする。振動が伝わり、葉月が連れていた変な生き物・ハイジは手すりから落ちそうになる。


ハイジを掴みながら「あんた、一体なんなのよ!」と叫ぶ葉月。「お前、人の親切を逆手にとりやがったムギ。そういうのムカツク…」。足元を車のヘッドライトが走り抜けていく中、パシリは構えを取る。


「ごめんなさい…」葉月は頭を下げる。戸惑うパシリ。葉月はハイジを持ったままパシリの横を歩いていく。あわてて振り向くパシリ。階段のところで頭を再び深く下げる葉月。パシリもつられてお辞儀してしまう。なにやってんだ…と思ったとき、葉月はすでに道路の向こうだった。


深夜、天城は古い年賀状を机の奥から引っ張り出す。その背後。壁に貼ってある無数の新聞の切り抜きの一つ…「天城勝利判定に疑惑!?」