74話 暴徒達の海岸①Intro
246を進むエースの運転するタウンエースは逆に進み、落としたコップは元に戻り、夜が朝に逆戻りしていく…。
数週間前。
たまプラーザを離れた未開封は、電車の中で目を覚ます。目の前には夜の海…。海岸線。カーステレオから流れる音。「本当の幸せ教えてよ〜〜壊れかけのレイディオ〜〜」とステレオとハモる、ハンドルを握ったマダム・ピッコリ。
駅を出た未開封、寝静まった商店街を一瞥し、タバコを取り出す。
――リングを失った男――
咳き込み、涙を流す未開封。ショウウィンドウに自分の姿が映ってるのに気づく。
「生き恥だよバカヤロウ…」よろめきながら、火のついた吸殻を投げ捨て歩き出す未開封。
―――その情熱の日々―――
ファミレス。笑い顔の仮面をつけた人々の中、一人素面で座っている未開封。「俺が変えますよ」不機嫌なツラ。
リング。
表彰台。
―――俺の指は、強く、しなやかで―――
青い空。
「生き恥…生き恥…」
波の音に吸い寄せられていく未開封。
道を渡る未開封。波の音、灯台。見開かれる目。
暗闇の中に浮かび上がる「「いのちの電話」の看板」看板。
岩場を転びそうになりながら歩く未開封。屈む。
波の音。
未開封の背中に当たるライト。
「あ?」
懐中電灯を持って立っているマダム・ピッコリ…。
―――ありとあらゆる手段で生きる事を描くと、死にたいという気持ちが抑えられた―――
「よっ」手を上げるピッコリ。
―――あの時、それを俺は見失っていた…。そして…今も―――
「どうしたんですの?そんな冷えた都会のオブジェに呑み込まれたよーな顔して…」